鎌倉市の都市計画道路の見直し中間報告その1が2012年8月に発表になりました。
同方針に対し、当会では鎌倉市へ意見書を提出しました。

 1956年に当時の建設省指示で決定された計画道路の中に台峯の心臓部を通る3・4・2号由比ガ浜関谷線があります。この道路は総延長8,600mの内、4,910mは未着工です。
 鎌倉市は2012年8月に発表した「都市計画道路の見直し方針」(中間報告その1)において、この道路の計画の見直しを行なっています。
 この道路はA区間、B区間、C区間に分かれており、台峯を通る道路はB区間になります。
 見直し方針では、B区間の必要性は低いとの判断がなされていますが、次のような記載がありますので、ここに抜粋します。
鎌倉参道線と雪ノ下大船線の代替機能を担い、自動車交通機能の必要性は高い。
しかし、当該区間が山崎・台峯緑地・古都保存法の特別保存地区・史跡仮粧坂を通過することから「歴史的風土・緑地保全・景観に与える影響」の観点や世界遺産登録を目指す上で、当該区間の廃止又は、形式等の変更を行なう必要性が高いと判断した。
景観域「古都継承地域」 (課題 現行道路構造令に適合しない可能性が高い。山崎・台峯緑地・古都保存法の特別保存地区・史跡仮粧坂を通過することから「まちづくりとの整合」や世界遺産登録を目指すという観点から、当該区間の廃止、及び道路の線形や地下式にするなど形式の変更を検討することが必要。)

 廃止なら問題はありませんが、「道路の線形や地下式にするなど形式の変更」を検討という言葉が併記されていて、計画を存続させる道を残した記載になっています。

NPO法人北鎌倉の景観を後世に伝える基金では、次の意見書を鎌倉市都市計画課に送付しました。


意見書  NPO法人北鎌倉の景観を後世に伝える基金  (理事長出口克浩)

都市計画道路(由比ガ浜―関谷線)(3.4.2)について
 北鎌倉台峯緑地は、神奈川県でも高い評価を受けている、自然度の高い緑地ですが、2004年12月多年にわたる鎌倉市民の活動と鎌倉市の努力が実を結び、買収が決まりました。買収決定後も生態系を良好に維持する為、台峯の里山的保全活動を続けている当会は、将来にわたり豊かな自然環境や景観が保たれるものと確信しておりますが「ぬえ」的存在として気がかりなのが台峯緑地を横切る上記都市計画道路の存在です。
 当該計画道路は1956年、今から57年前に当時の建設省指示で決まったようです。「もはや戦後ではない」という言葉がはやった年です。2002年国土交通省は「都市計画道路」全般の見直しを指示しました。
 意向を受けて県や市は検討を重ね、2012年鎌倉市は「都市計画道路の見直し方針」(中間報告)としてまとめ、公表しました。その中で当該道路については全体をA区間からC区間の3区間に分けそれぞれの区間ごとに「必要性」を判断しています。
 その結果、B区間(2800m)については新たに道路を設ける必要性は低いと判断しています。判断の根拠として自然度の高い山崎台峯緑地、古都保存法特別地区を通過するなどを挙げ、さらに踏み込んでB区間については「廃止または形式的変更」を検討すると記しています。
 当会は台峯の自然の重要性と多くの市民が台峯緑地保全の必要性を支持していることから、B区間廃止の判断は当然と受け止めます。ただし「形式的変更」の文言は不要です。「形式的変更」など曖昧な言葉は将来の道路の存続にもつながりかねません。世界遺産登録を標榜する鎌倉にとってもあり得ない選択です。当該区間の道路は「廃止」ですすめてください

                                
鎌倉市の都市計画道路の見直し中間報告その2が2012年11月に発表になりました。
同方針に対し、当会では鎌倉市へ意見書を提出しました。

その2における3・4・2号由比ガ浜関谷線B区間総合的判断について、同書では次のようになっています。
・ 現計画のままでは、歴史的風土特別保存地区や史跡指定地、(仮称)山崎・台峯緑地候補地を通過するため、歴史的風土や緑地保全に直接的に重大な影響を及ぼす。
・ [方策2]の場合、平行している路線3・6・7号雪ノ下大船線の交通量が緩和される。
・ 現計画を見直し、地下式とするなど形式及びルート等の都市計画変更を行うことも考えられるが、事業化の見通しのない中で新たな手続きや建築制限を行うことは困難である。
・ 国道1号線と国道134号線を直接連絡する唯一の路線であり、玉縄、大船、鎌倉地区を相互に結ぶ都市の骨格をなす幹線であり、将来的には防災対策上重要性の高い緊急輸送路等としての性格を有する路線である。
・ B区間を廃止した場合、並行している雪ノ下大船線へ渋滞の影響が及ぶと予測される。
・ 現在、地区交通計画等のソフト的な施策の検討を進めており、今後流入抑制策の進展など渋滞緩和の効果が期待できる。また、将来の人口減少に伴い、車両保有台数の減少傾向も見込めるものと考えている。
・ 神奈川県施行の広域的な路線であることから、市のマスタープラン等の改定の中で方向性を検討するに留まらず、県の広域計画との調整も必要となる。
・ したがって、今後の状況も見ながら都市マスタープランや交通マスタープランの改定、次回の見直しなどにおいて代替ルートの検討も含め、広く市民意見を聴きながら再検証を行うこととし、現時点での見直しの方向性は「保留」とする。
総 合 評 価
保留

意見書  NPO法人北鎌倉の景観を後世に伝える基金  (理事長出口克浩)

都市計画道路(由比ガ浜―関谷線)(3.4.2)について
 先般、都市計画道路(由比ガ浜―関谷線)(3.4.2)に関する「中間報告その1」について意見とその理由を意見票にまとめ提出いたしました。
今回ステップ3、ステップ4からなる「中間報告その2」が公表され、意見が求められております。
内容的には交通量の予測面から、B区間の廃止は困難であること、当該道路は神奈川県施行の広域的な路線であることなどから総合評価は「保留」とするものです。(保留とは今後の状況を見ながら再検証の意)
「中間報告その1」に比べ後退した感は否めません。
中間報告その1、その2全体を検討した結果、私たちの見解は前回示した内容と同一といたします。
すなわち、都市計画道路(由比ガ浜―関谷線)を3区間に区分した内のB区間については「廃止」するよう改めて望む次第です。
以上
                                

鎌倉市の都市計画道路の見直し方針が2013年3月に発表になりました。
同方針に対し、当会では鎌倉市へ意見書を提出しました。
由比ガ浜関谷線(B区間)については、今回の見直し方針においても総合判定は「保留」となっています。以下「保留」判定に至る鎌倉市の経緯説明を記載します。
都市計画道路の見直し方針2013年3月(鎌倉市まちづくり景観部都市計画課)

都市計画道路の見直し方針(その1)第2章ステップ2に記載の事項

鎌倉参道線と雪ノ下大船線の代替機能を担い、自動車交通機能の必要性は高い。 しかし、当該区間が山崎・台峯緑地・古都保存法の特別保存地区・史跡仮粧坂を通過することから「歴史的風土・緑地保全・景観に与える影響」の観点や世界遺産登録を目指す上で、当該区間の廃止又は、形式等の変更を行なう必要性が高いと判断した。 景観域「古都継承地域」 (課題 現行道路構造令に適合しない可能性が高い。山崎・台峯緑地・古都保存法の特別保存地区・史跡仮粧坂を通過することから「まちづくりとの整合」や世界遺産登録を目指すという観点から、当該区間の廃止、及び道路の線形や地下式にするなど形式の変更を検討することが必要。)

都市計画道路の見直し方針(その2)第3章ステップ3に記載の事項

鎌倉中央公園と(仮称)山崎・台峯緑地候補地の間・歴史的風土特別保存地区・史跡仮粧坂等を地表式で通過するため、古都景観に及ぼす影響が大きい。 道路構造令との適合の規定に適合しない可能性が高いため検証する必要がある。
世界遺産登録のコアの部分及びそのバッファの部分に、巨大な法面の発生など歴史的風土、緑地景観に多大な影響を及ぼす。 路線全体が、国道1号線から国道134号線を結ぶ鎌倉縦貫道的な重要幹線であり、また、災害対応の際の南北方向の緊急輸送路としての役割も大きいと考えられる。 交通需要予測を実施し、当該区間の存続及び廃止、形式等の変更の検討を行う。 縮小規定を含め現行道路構造令に適合しない。 神奈川県との調整を要する。
◎存続●廃止または その他の変更候補 ※ステップ4での検討が重要となる

都市計画道路の見直し方針(その2)第4章ステップ4に記載の事項
総合判定 保留

鎌倉市都市計画課御中

       意見票「都市計画道路の見直し方針案」

後世の為に「日本橋の上を通る首都高速道路」のような愚行を繰り返さないで

鎌倉市では都市計画道路の見直し作業(2007年~2013年)を実施中です。 この間、中間報告その1、中間報告その2を公表し、市民から意見の募集を行いました。(当基金は意見書を提出済み・詳細略)

また都市計画審議会を2回実施しています(当会はいずれも傍聴参加) 今回は過去2回にわたる意見公募の結果を反映し「都市計画道路の見直し方針(案)」としてまとめた上での意見募集です。 都市計画道路の見直し方針(案)は「中間報告その2」と内容的には大きな違いはありません。都市計画道路(由比ガ浜―関谷線)B区間の総合評価結果は「保留」となりました。 「保留」とは今後の状況を見ながら再検証を行う路線という意味です。 現在までのところ、行政が事前に作成した「行程表」の筋書き通りに進んでいます。今後は、歴史的風土や緑地保全に対する影響と交通量、防災対策道路の課題をどのように調整するかという事になるのでしょうか。

当基金の見解は、都市計画道路(由比ガ浜―関谷線)のB区間(藤沢鎌倉線~横浜鎌倉線)については「廃止」を求めるものです(詳細略)。

もし「存続」となると幅9メートルの都市計画道路が台峯緑地から源氏山公園の歴史的風土と緑地保全されるべき地域に通ることになります。 それは1964年の「東京オリンピック」開催に間に合わせるため1963年「日本橋」(重要文化財指定)を塞ぐように「急ごしらえ」に建設された首都高速道路の構図と重複することになります。 このような計画はどのように美辞麗句をならべても後世の人に納得してもらうことは出来ません。

それより本計画を別の視点、つまり客観的事実から考察してはいかがでしょう。

第一に「豊かな自然環境と歴史的景観の維持」という問題です。

鎌倉市は「市民憲章」本文の中で鎌倉の歴史的遺産と自然および生活環境を破壊から守り責任を以って次世代に伝えると宣言しています。 また鎌倉市は世界遺産登録の意義として「鎌倉の歴史的遺産を大切に守り、次世代に残してゆくことを、世界に向けて示すと共に責任を以って、これを後世に伝える(鎌倉世界遺産登録推進委員会)と述べています。 上記二つの事実からも明らかなように市民に、国民に、世界に約束した事柄を都市計画道路の新設と言うことで反故にすることは出来ません。

第二に将来人口統計の側面です。

2013年3月27日厚生労働省の国立社会保障・人口問題研究所は2040年には全都道府県の人口が2010年と比べ減少するとともに、65歳以上の人口の割合が3割を超えるとしています。鎌倉市の人口はどのように推移するでしょう。 2010年17万4千人の人口は2040年には14万9千人に減少するとしています。(15%の減少)

この事実は何を示しているのでしょうか。道路建設の必要性を根底から否定していると捉えるべきです。

このように客観的事実からも計画が如何に無意味なものであるか証明されています。

当基金としてはB区間を「廃止」つまり道路を新たに建設しなくても住民に悪影響を及ぼすとは考えにくく、むしろ次世代に胸を張って語り伝えられる方策と考えます。 以上